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第84回 (2020年1月8日)

 「飛び恥」。航空機での移動を巡り、欧米ではこんな考え方が一部広がっているらしい。航空機は他の交通手段と比較し二酸化炭素(CO2)排出量が多い。地球温暖化が問題視される中「CO2を撒き散らしながら移動するのはカッコ悪い」というわけだ。スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさんが、スペインで開かれた国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)へ帆船で向かったのも、こうした考えからだろう。

 COP25の期間中、環境団体が温暖化対策に消極的な国に贈る化石賞を日本が2度受賞した。日本はクールジャパン戦略を掲げ外国人観光客の拡大に取り組むが、世界が温暖化対策に舵を切り、飛び恥なる価値観すら出ている以上、対策に後ろ向きと思われるのは痛手だ。マイナスイメージが強まれば、観光客は減りこそすれ、増えはしまい。

 ただ、国内でも対策に乗り出す自治体はある。長崎県壱岐市、神奈川県鎌倉市、長野県白馬村など5自治体が昨年、温室効果ガスの削減など気候変動対策に優先的に取り組む意思表明「気候非常事態宣言」(CED)を発表した。CEDは世界中の都市で宣言が相次ぎ、自治体の環境対策への姿勢を示すひとつの指針とされている。

 クールジャパン戦略には「世界の共感を得て、日本のブランド力を高める」とある。観光誘致にも積極的な壱岐、鎌倉、白馬などの取り組みは海外の共感を呼び、旅行先として、飛び恥をかき捨て航空機で向かうほどカッコいい存在であり続けられるだろうか。

(西江)

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