記者の眼記者の眼

第273回 (2024年11月27日)

「掘って、掘って、掘りまくれ!(Drill, baby, drill!)

 

 これは某超大国の次期大統領選の候補者による選挙期間中の一言。エネルギーコストを引き下げるために、化石燃料の生産を増やす方針を公約として宣言したものだ。同候補が大統領選に勝利したため、この公約の実現性が増している。

 

 しかし、この言葉に対して、「世界各国が約束した2050年のカーボンニュートラルの実現はどこへ行ったのか?」という違和感を覚えた人は多いはず。

 

 反脱炭素の潮流は他にもある。ここ数年で、石油メジャー各社は脱炭素を訴えつつも、化石燃料の開発を続ける方針を再度、打ち出している。国際エネルギー機関(IEA)の見通しによると、世界の石油および天然ガスの需要は2030年にピークこそ迎えるものの、その後は2050年まで、大きく減少することはないという。

 

 世界が化石燃料を捨てられない理由はいくつもある。まず、2022年以降のウクライナ紛争によって、エネルギー安全保障が改めて重視されている。また、化石燃料の生産コストが比較的低いことも要因だ。しかし、最大の理由は「化石燃料による収益が太陽光や風力などの再生エネルギーを大きく上回るため、株主による受けがいいのです」(日本のシンクタンク)。結局、収益と株価が最重要項目のようだ。

 

 脱炭素が人類の将来にとって共通の課題であることはすでに「常識」。しかし、金銭欲は人間にとってほぼ「本能」だ。このため、脱炭素社会の実現は、金銭欲という本能のハードルを超えられるかどうかがカギと言えそうだ。

 

   

(橋本)

 

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