22年度官公庁電力調達=燃料価格の高騰で不調相次ぐ
リム独自で収集した全国の官公庁及び地方自治体などの公共施設向け電力入札データでは、2022年4月から2023年3月まで末開札日ベースで収集した4,165件案件の中で、少なくとも2,800件以上が不調あるいは中止となったことが分かった。
相次いで不調となった原因は、2022年2月にロシアによるウクライナへの軍事侵攻で、世界のエネルギー事情が一変したことによる。2016年に小売全面自由化が実施されて以来、新電力の多くはスポット市場から電力を調達し、官公庁および自治体の電力入札に対応してきた。ところが、ウクライナ問題でその多くを輸入している原油や液化天然ガスなど化石燃料の価格が高騰したため、電力のスポット価格もこれに連動。スポット市場からの調達コストが膨らんだため、各社の収益が圧迫され、倒産や撤退に追い込まれる事業者も相次いだ。
こうした状況の中で、不調となった入札案件は、例外的に前年度契約していた電力会社(新電力、大手電力)が見積もりを作成したが、予算を超過するケースが大半だったという。このため、一般送配電事業者による「最終保障供給」を利用する需要家も多くなった。最終保障供給は、不測の事態などにより需要家が小売電気事業者と契約を結べなかった場合、一般送配電事業者が需要家に対して電気を供給する仕組み。このため、通常の電気料金より割高に設定されているが、燃料高を背景に価格の逆転現象が起きたため、最終保障供給を選択する需要家が相次いだ。
経済産業省が7月3日に発表した統計によると、全国の「最終保障供給契約」を利用する需要家は、ピークとなった2022年3月の45,871件に対し、2023年6月15日時点で16,378件まで減少した。価格の逆転現象を是正するため、2022年9月から最終保障供給の価格設定が見直されたことが要因。さらに、燃料高で販売が停止となっていた高圧や特別高圧の標準メニューが今年4月から販売再開となったことも、需要家が最終保障供給を取り止める一因となった。
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