どうなる今冬のエネルギー供給2024(下)-バイオマス、アンモニア
【バイオマス】 バイオマス燃料市場では、現時点で輸入材の木質ペレット、パーム椰子殻(PKS)とも供給にタイト感が見られない。しかし、この冬は需要の戻りが期待され、需給に変化が起こりそうだ。 木質ペレットは、既存のバイオマス発電所で火災や設備トラブルが相次ぎ、日本向けの需要が長らく低迷。日本向けで余剰となった東南アジア産が韓国向けに転売されるなど、供給に余剰感が漂った。 PKSも、乾季に伴うアブラヤシの収穫増で、インドネシアの大手サプライヤーが在庫を抱えるようになり、売り圧力が強まった。この結果、インドネシア積みのスポット相場は7月18日時点で81ドルと、前年同時期から50ドル下落し、レポート発行以来の最安値を更新した。 しかしながら、2025年に木質ペレットを主燃料とした大型バイオマス発電所が複数立ち上がる予定で、今冬に実施される試運転用のペレットを物色する事業者が現れた。PKSでも、割安感から買い気が回復しつつある。加えて、今年度は持続可能性を担保する第三者認証を取得したPKSのみで運用する初めての年で、多くの発電所が下期分の必要量を確保し終えていないようだ。冬にかけ、いずれの燃料もスポット商談が活発化すると見込まれている。
2024年8月時点で、国際市況はスエズ以西でアンモニアの引き締まり感が出ている。北アフリカなど地中海沿岸で高温が続いているため原料の天然ガスが電力向けに振り分けられ、アンモニアの製造が減少している。また、アルジェリアなどでは、停電のためアンモニア製造工場の稼働が停止していることも背景にある。 冬場に向けて気温が低下するとはいえ、秋にはガスの電力向け需要が減少し、アンモニアの引き締まり感も徐々に緩和すると予想されている。また、2022年2月のロシアのウクライナ侵攻後、出荷が停止していた黒海出しが今秋にも再開されるとの見通しが出ている。同じころ、米国メキシコ湾岸で新規アンモニア設備の立ち上げが見込まれているため、一段の供給増から価格が安定するとみられている。 日本の無水アンモニアの輸入価格は、23年6月の4万6,205円を底に、24年5月は7万9,655円へと上昇した。景気回復に伴いアンモニアの需要が回復している。また、為替市場の円安も価格上昇の要因になっている。23年6月の1ドル135.37円が、今年5月には155.47円と15%下落した。
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