新春特集=アジア製品、2025年は製油所の新規稼働で需給緩和感強まる
-ガソリン- ガソリンは2025年も需給緩和感が払拭されそうにない、との見方が多い。中国では新型コロナウイルスの感染収束後も景気低迷が続いていることに加え、新エネルギー車(NEV)の普及に注力しており、ガソリン需要が縮小している。一方、世界的には新規設備が稼働し、供給が増加している。24年にはメキシコでオルメカ製油所(日量34万バレル)、ナイジェリアのダンゴテ製油所(同65万バレル)が商業運転を開始。クウェートのアルズール製油所(同61万5,000バレル)も稼働が安定してきた。ダンゴテ製油所はガソリンの輸出も本格化しており、中東品の供給に余剰が生じている。このためトレーダーは中東品をアジアへ積極的に持ち込んでいる。 -ナフサ- ナフサの需給は引き続き緩そうだ。中国の新規の大型ナフサクラッカーの立ち上げが複数予定されているが、同国内の製油所出しナフサで一定数の需要を賄えると見られている。市場関係者は「輸入玉と国内製油所出しナフサで安価な方を選べばよく、輸入が大幅に増えるわけではないだろう」と指摘した。一方で石油化学製品の市況の不振が続いている。原料の原油やナフサの相場が下がらないなか、オレフィン相場は需給の弱さにより上伸力を欠いている。こうした状況のなか、中国でナフサクラッカーが追加で立ち上がると、オレフィンの供給が一段と過剰になり、需給緩和と市況の下落につながる可能性が指摘されている。市場ではオレフィンの採算性を維持することを念頭に、中国国内外の既存のナフサクラッカーの稼働率が低下するとの観測が聞かれる。 -軽油、ジェット燃料- 軽油の需給は緩むとの予想が広がっている。上記のとおり複数域内における新規製油所の稼働等で供給増が予想される一方、世界的に需要は限定される見通し。特に欧州の景気が2025年も伸び悩むとの観測は弱材料だ。米国トランプ次期大統領が輸入品に対する関税の引き上げを主張していることも国家間の貿易停滞を招き、軽油需要を鈍化させる要因となりそうだ。北東アジアの石油会社は2025年の軽油のターム契約交渉を行ったが、総じて2024年の契約水準よりも割安だった。 一方、ジェット燃料は国家間往来の増加を背景に、需要は底堅く推移する見通しだ。持続可能な航空燃料(SAF)の利活用も進んでいるが、コスト面から既存ジェットの需要は底堅い見通しだ。
アジアの重油市況は、域外から持ち込まれるアービトラージ品の数量に影響を受けそうだ。域外では、アルズール製油所、ダンゴテ製油所といった大規模製油所が本格的な稼働を始めており、24年中は月によって10万トンを超える複数の低硫黄重油カーゴがシンガポールを中心としたアジア市場に持ち込まれた。25年も引き続き月間で、複数カーゴがアジアに到着する見通しだ。ただ、「欧州の需要増、製油所トラブルといった要因で、アジア向けが減少した場合、相場が押し上げられる可能性もある」(市場関係者)との指摘も聞かれる。需要面では、中国の景気動向によって、舶用需要が左右されそうだ。 |