先進国を中心に地球温暖化対策として、これまで脱炭素を目指してきたが、2025年は米国でトランプ政権が誕生することで、風向きが変わりそうだ。すでに24年11月16日、エネルギー長官に油田サービス会社リバティー・エナジーの創業者兼最高経営責任者(CEO)クリス・ライト氏の起用を発表するなど、政権の化石燃料回帰の姿勢が鮮明だ。
また、日本国内では、為替市場で円安の進行により、予定よりクリーンエネルギーの生産コストが上昇しており、20年10月に当時の菅政権が「2050年カーボンニュートラル宣言」を出したころに比べ、脱炭素を取り巻く環境に変化が出てきた。25年の動きを、エタノール、廃食用油、アンモニアで探ってみた。
エタノール、値動き激しい展開に
25年のエタノール価格は比較的安定していた24年から一転して、値動きが激しくなりそうだ。米国でトランプ政権が始動し、ウクライナ戦争の終結に動くほか、各国と貿易交渉が激しくなることが予想される。事態がどう動くか不透明で、これらを材料に原油価格が乱高下すれば、原油の影響を受ける形で、エタノールの値動きも激しくなる。環境価値の面でも、トランプ政権が米再生可能燃料基準(RFS)で定めたバイオ燃料の使用義務や、税控除をどう扱うかもも読みづらい。
世界ではエタノールの需要自体は着実に増加する方向にある。ブラジルのほか、インド、日本でもガソリンへのエタノールの混合比率を引き上げる方向だ。ただ、「こうした取り組みは段階的であるため、相場への影響は少ない」(商社)。
相場が急騰するとすれば、原料のトウモロコシやサトウキビの天候不順による大幅な減などが挙げられる。特にサトウキビは昨年8月のブラジル山火事の影響が尾を引いているかどうか懸念される。
廃食油、コスモ石油堺製油所SAF製造装置の稼働がカギ
廃食油市場で2025年最大の関心事は、コスモ石油堺製油所で予定されている廃食用油原料SAF事業(HEFA)だろう。大阪・関西万博直前に生産を開始し、国内外の航空会社向け供給を目指している。この事業は、国内初のSAF量産化(年間約3万kl)、国内初のCORSIA適格燃料認証の取得という2つの特色をもつ。原料は100%国産の廃食用油を使い、東京メトロなどの産業系や一般家庭系などから回収した廃食油を、SAFFAIRE SKY ENERGYを通じて供給する。
また、都内ではコスモ石油系列SSで廃食用油の市民回収を行っている。廃食油を原料としたSAFは社会実装が身近なカーボンニュートラル事業であり、コスモ堺製油所での生産は、文字通り国産SAF事業普及の試金石として注目されている。
アンモニア、価格差補助支援事業の中身は
クリーンアンモニア市場では、低炭素水素等サプライチェーン構築支援事業(価格差に注目した支援)の結果が注目される。これは、「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律(水素社会推進法)』」に基づき、認定された事業者は15年間、供給するクリーンエネルギーと既存燃料の価格差分を国から支援を受けるというもの。2024年秋にも発表されるとみられていたが、年明けに持ち越された。当初想定されていた事業より、かなり絞り込まれるとの噂が聞かれるが、どのような事業者が認定されるか、こちらも今後の展開をみる上での試金石になりそうだ。

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