第160回 ~プロパンガスはどうして都市ガスに比べて高いの? ~の巻(2020年11月18日)
都市ガスはプロパンガスに比べてガス代が安くて助かるなぁ。
うさりんの家は都市ガスなの?
そうだよ。以前は都市ガスの使えない地域に住んでいたから、プロパンガスを使うしかなかった。ガス代が高くて大変だったんだよね。
どうして価格が大きく違うのか知っている?
プロパンガスはボンベで供給されるから、ガス管で直接家庭に供給される都市ガスに比べて配送コストがかかるからじゃないの?
確かに配送コストは大きな要因ね。プロパンガスは、ボンベに詰めて車で各家庭に配達するのだから、導管に通して各家庭に直接届ける都市ガスと比べるとどうしても高くなってしまうわ。でも理由はこれだけじゃないわ。
と言うと?
料金制度が都市ガスとプロパンガスでは異なるの。都市ガスは「総括原価方式」と言って、料金設定に一定の縛りがあり、原価に対して高すぎる料金設定ができないのよ。一方、プロパンガスは小売業者が自由に決定する「自由料金制」を採用していて、業者に価格設定が委ねられているの。
わざと割高な価格を設定することもできるってこと?
理屈としては可能よ。でもそれ以上に、プロパンガスの販売業者は都市ガス業者に比べて小規模な会社が圧倒的に多いため、大規模業者のような価格競争をさせてしまうと経営が成り立たなくなる恐れがあるの。だから価格決定に自由度を持たせることで小規模事業者を守る意味合いがあるの。
うーん、それは安くしてほしいと言いづらいなあ。あとプロパンガスと都市ガスは同じガスでも成分が違うんでしょ?それは価格に影響しているの?
原料のLNGとLPGの話ね。LNG(液化天然ガス)はメタンを主成分としているのに対して、LPG(液化石油ガス)はプロパンあるいはブタンを主成分にしているわ。この2つの価格を比較するとLNGは30.25千円/トン、LPGは40.03千円/トン(2020年9月、財務省)で、単純な比較ではLPGのほうが原価は高いわね。
じゃあ、LNGをボンベに詰めたほうが安くなるじゃないか!
それはできないの。LNGとLPGは主成分が異なることはさっき話したわよね?主成分が異なると気体が液体に変化する温度である沸点も変わってくるわ。プロパンの沸点は摂氏マイナス42℃であるのに対し、メタンの沸点は摂氏マイナス161.5℃!メタンは極低温なの。
ん??どっちも超低温だから液体になんて普段なるわけがないじゃん。何が関係あるのさ?
実は温度を下げて液化する際、圧力をかけることで沸点に達しなくても液化できるのよ。さっき教えた沸点は1気圧時のものなの。プロパンはマイナス42℃で液化すると言ったけれど、圧力を加えると常温でも液化できるのよ。でもメタンは沸点が低すぎるから、いくら圧力をかけても常温では液体にすることはできないわ。つまり、家庭に設置してあるボンベにLNGを充填することは物理的に不可能なの。
ボンベで運ぶにはプロパンガスである必要があるんだね。ガスの価格にもちゃんと理由があるんだなぁ。
プロパンガスの価格がどうして高いのか、少しは分かってもらえたかしら?
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(文:朝比奈)
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