第252回 ~水素社会へ向けた縁の下の力持ち ~の巻(2024年7月10日)
ねえ、うさりんって、『H』なこと考えていたことあったよね。
過去完了形ってわけでもないけど……、でも僕たちの間で『H』といえば『水素』のことだね。僕たちが『H』について話をしてもう4年が過ぎたよ。参考:第144回 ~「水素」ってどうやって作るの ~の巻(2020年4月8日)
あのときは、水素を得るためには、石油やガスなどの化石燃料を水蒸気改質する以外に、水を電気分解(電解)する方法があることを学んだわね。
そうだね。世界中で太陽光や風力といった再生可能エネルギーの普及が進んでいるから、そこから発生した電力を使えばよりクリーンな水素が得られるってわけさ。
あれから4年が経って、世界のプロジェクトの数も増えた。IEAが2023年9月にまとめた報告では、水素製造用の電解装置の容量は2022年末時点で約700メガワット(MW)、最終投資決定(FID)に達しているもの、もしくは建設中のプロジェクトが予定どおり稼働すると、2023年末には2ギガワット(GW)とほぼ3倍になるとの見込みとなっていたわ。水素を生産する際に消費する電力が、生産能力を表す単位として使うわけね。
なるほど。ものすごい勢いで生産能力が増えているんだね。
しかも、IEAによる別の報告では電解装置のメーカーの生産能力は現在の14GWが、2030年までに155GWに到達する可能性があるとしているわ。
電解装置を生産する役割として、化学メーカーが培ってきた技術が活用されることが期待されているんだね。
そうなのね!?
純粋な水はイオンを含まないので電気が流れにくいから、電解質の水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどを添加したアルカリ性の水を電気分解するのが一般的と言われているんだ。
そして、『水素』と『酸素』が発生するのよね。
そう。実はこれ、化学メーカーが長らく事業として行ってきた、食塩水を電気分解して塩素と苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を生産する技術の活用が可能といわれているんだ。日本では食塩水を電気分解する装置や、そこで使用される電解膜と呼ばれる部品で高い技術力を持っている企業が複数あるんだよ。
再生可能エネルギーを利用した水素製造の過程には、化学メーカーがこれまで磨いてきた技術が生かされ、水素社会の実現のためにまさに縁の下の力持ちとして役立とうとしているんだね。
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(文:北村 )
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