記者の眼記者の眼

第256回 (2024年7月31日)

 世界一の人口を誇った中国が、いつの間にか少子化問題に頭を悩ませる時代を迎えることになった。ここ数年、新生児の出生率が年々低下する一方、高齢化がますます深刻な状態になりつつある。中国政府が少子・高齢化を解決するため、出産手当など育児面での福祉政策に重点を置くなか、民間では企業が性別を問わず、定年を65歳まで引き上げているといったニュースも聞こえてくる。人口減少に伴い、今後、生活用品、食料、不動産、自動車など様々な業界に影響が及ぶと見られている。

 

 このうち不動産業への影響を見ると、中国では国民1人につき住宅3軒程度の供給があるとの情報がある。つまり、1人につき物件が少なくとも2軒程度が余っている状況ということになる。真偽はともかく住宅販売の不振が深刻さを増している。

 

 不動産業の低迷を受け、建築資材、家電用などの石化製品需要も後退している。また、世界的に経済が後退局面を迎えており、中国からの最終製品の輸出も低迷している。一方、中国ではここ数年、新規の石化設備の立ち上げが多く、供給が余剰となる状態が続いている。こうした状況下、製油所、ナフサクラッカー、複数の石化設備は稼働停止または低稼働を強いられている。

 

 このため中国の経済回復については、この先数年かかるとの見通しが聞かれる。担当記者として、石化業界の動向に注目していきたい。 

 

 

 

(金)

 

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