記者の眼記者の眼

第261回 (2024年9月4日)

 ゴールデンウイーク(GW)、地元の石川県で友人とお酒を飲んでいたときのこと。携帯電話が鳴った。「おい!やっと水が通ったぞ!きょうは水道開通祝いの飲み会や」。元旦の地震で被害を受けた珠洲市に住んでいる知人からだった。こちらはこちらで友人と再度、乾杯。頬のゆるみを感じた。

 

 GWから約2カ月後、メディア業界で働く大学の先輩と会った。能登半島地震の話になり、彼は言った。「政府がどれくらい助けるか次第だな」。この発言に悪気はなかったのかもしれない。彼の考えなのか、見聞きした意見なのかも定かでない。ただ、出身者としては「そんな言い方はないだろう」と悲しい気持ちになった。

 

 翻って、自身が書く記事はどうか。エネルギー価格を変動させる要素のなかには、自然災害や戦争のような軍事的リスクが含まれるが、書き方ひとつで被害に遭った方々を傷つける可能性がある。非常事態を報じる際には、事実を早く伝えると同時に、配慮ある言葉遣いが大切と感じた。加えて、いたずらに不安をあおらないよう注意を払いたい。

 

 2024年も8カ月が経過。この間、日本国内だけでも東北地方の豪雨や四国・九州地方での大地震と、災害が続いた。南海トラフ地震への不安はぬぐえない。世界に目を向ければ、各地で争いは続いている。記者として届けられる情報はなにか、どういった表現が適切か。人を傷つけることなかれ、との思いを強くした。

 

(櫻井)

 

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