第283回 (2025年2月12日)
東京商品取引所で試験上場中のLNG先物取引の3年の取引期限が4月3日に迫っている。LNG先物は2022年4月の取引開始後、鳴かず飛ばずの状態が続いたが、昨年8月から少しずつ売買されるようになった。それでも2024年の約定数は1日平均で1.95枚(枚は1,000英百万熱量単位)。とても市場が機能しているとは程遠い状況にある。
リムのLNGレポートチームの一員として、常々思うのは先物の原資産であるLNGのスポット市場の不透明性である。例えば、LNGプロジェクトの生産トラブル。現物のフローに影響を及ぼす重要な情報だが、多くの場合は開示されない。トラブルが発生しても、契約当事者間で水面下で処理されていく場合が大半である。
スポット市場がこういう状況であるため、LNG先物市場には投資家や金融系の投資ファンドの参加の拡大はまず見込めない。東商取の「投資部門別建玉内容集計表」によると、海外投資家の参加は昨年11月からみられるが、それまではポジションゼロが続いた。
LNG先物に代わって、当業者がLNGのヘッジ先として活用するのが蘭天然ガス(TTF)先物である。一日の出来高は30万枚超と流動性は高い。ただ、悩ましいのはTTFとLNGは別物であるため、値動きが必ずしも一致しないという点だ。TTFはもともとロシア産ガスの取引を前提に成長してきた経緯があるとされ、「制裁でロシア産ガスの流入減少に伴い、価格が不安定な状況に陥りやすい欠点を抱えている」(本間隆行・住友商事グローバルリサーチ経済部担当部長)。
結局、LNGのヘッジ先としては、本来ならLNG先物を活用するのが一番いい。ただ、そのためには、市場存続に向けた東商取の努力はもちろん、それだけではとても克服できない課題が山積している。
(山本)