第269回 (2024年10月30日)
「この結末にあなたは絶対騙される」。学生のころ通ったレンタルビデオ店で、とあるサスペンス映画の横に添えてあった手書きポップの謳い文句だ。仰々しいと思いつつ借りたところ、物語はハラハラドキドキ。あっという間にエンドロールを迎えた。ポップの書き手が結末のどんでん返しを匂わせたくなるのもわからなくはない。
人によってはネタバレとか、誇張表現というかもしれない。それでも結末を匂わされたことで、筆者のように借りるという次のステップに進む人も少なからずいるはずだ。事前情報がなければ、借りるか否かの判断すらままならない。個人的には映画選びに限らず、物事を決めるときは先に大まかな展望を知っておきたい。
日本政府が物価高対策の一環で講じている「燃料油価格激変緩和対策事業」の終了時期を巡り、石油業界関係者が神経を尖らせている。事業終了は油価上昇など市場の混乱を招く可能性があるからだ。政府は現時点で事業を2024年内に限り継続とするが、これまで終了期限目前の延長決定、制度変更といったどんでん返しがままあった。
事業を終えるにせよ、延長するにせよ、大まかな展望が読めれば、関係者はそれに合わせて、適宜必要な対応を判断できる。政府が先行きを手書きポップのように仰々しく打ち出す必要はもちろんない。しかし、もう少し核心に迫るような匂わせがあってもいいような。誰も国の政策に映画みたいなハラハラドキドキ要素は求めていない。
(西江)