記者の眼記者の眼

第260回 (2024年8月28日)

 米国大統領選挙に向けて両陣営の運動が過熱しているが、エネルギー政策では共和党のドナルド・トランプが燃料費の低減を図るべく原油増産を公約に掲げる一方、民主党のカマラ・ハリスは化石燃料には言及せず気候変動に焦点を当てるなど対照的だ。筆者は普段、米国産原油を取材しているが、ある演説でトランプが「米国は世界で最高のスウィート軽質原油を生産している」と誇らしげに語った際は、思わずニヤリとした。

 

 「緑色の眼鏡をかけると世界は緑色に見える」ということを言った哲学者がいたが、この緑色の眼鏡はメディアと想定することもできるのではないか。インターネットで米国のテレビ報道を目にすると、各局はどちらの大統領候補を支持するかを明確に打ち出している。各テレビ局は政治信条や経営上の利害関係などの緑色の眼鏡をかけた上で、一連の番組を制作しているとも言える。個人レベルでは先入観や願望、思想信条などが緑色の眼鏡に相当し、筆者も取材活動のなかで、前日に得た情報で形成された相場観が、当日の市況を認識するうえで妨げになっていると実感することが少なくない。

 

 ところで、トランプとイーロン・マスクが先日対談したが、日本のメディアはトランプの原発に関する発言に対して批判を展開した。しかし、この報道は本当に妥当なものか、あるいは文脈を完全に無視した切り取り報道なのか。一次情報である実際の音源にあたり、虚心坦懐に自身の耳で確認したいものだ。

 

(小屋敷)

 

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