記者の眼記者の眼

第104回 (2020年10月14日)

 新型コロナウイルスの緊急事態宣言が首都圏でもようやく解除される525日の直前、近所の酒店でアルコールを2本、入手した。酩酊用ではなく薬用だ。製造元は福島県の酒造会社。そうした消毒用アルコールがあることはテレビで知っていたが、まさか実際に目にするとは、そのころは思ってもいなかった。手にしたガラス瓶は薬品というよりも、ウィスキーを入れた方が似つかわしい形状。消毒製剤が必要であることはもちろん、「珍品」という思いも手伝い、1人あたりの制限一杯の2本を購入した。

 

 しかし、10月の現在、酒造会社の消毒用アルコールは珍品などでは決してなく、もはや「日用」品。近所のドラッグストアの店頭には、中国地方の酒造会社が生産した消毒用アルコールが、間に合わせの瓶ではなく、薬品に似つかわしい合成樹脂のボトル入りで店頭に並べられている。地酒ならぬ、地アルコールの情報がインターネット上にもあふれる。

  

 薬用アルコールが、豊富に流通していることは、消費者として非常にありがたい。ただ、全国の杜氏の方々を考えると複雑な気持ちも沸く。新型コロナの影響もあり、様々な変化を余儀なくされる事態に直面しているのは、エネルギー業界も例外ではない。「グリーンリカバリー」とか「水素社会」といった単語からは、一種ユートピアのイメージが漂う。しかし、そこまでの道程には、変化に伴う痛みや摩擦も数多くあることは、想像に難くない。気が引き締まる。

  

(戸塚)

 

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