記者の眼記者の眼

第132回 (2021年11月25日)

 街中でクリスマスのイルミネーションを目にする季節になった。色とりどりのデコレーションは、コロナ禍で鬱々とした気持ちを少しは和らげてくれる。サンタクロースがプレゼントを抱えてやってくるのが楽しみだ。

 

 ところがふとした疑問が心をよぎる。サンタクロースが入ってくる煙突を備える住宅ってどれほどあるのかしら。街中で煙突を見かける機会はめっきり減った。入口を求めて右往左往するサンタクロースを想像し、思わず苦笑いを浮かべる。

 

 いや、ちょっと待てよ。煙突が姿を消しつつあるのは、人類がより効率の良いエネルギーを手に入れた結果ではないか。薪を割って湯を沸かし、五右衛門風呂に浸かったのは遠い昔。いまではボタン一つで瞬時に温かいお湯が蛇口から出てくる。煙突が見当たらなくなったのは決して悪い話ではない。

 

 一方、工場地帯などではいまでも煙突を目にする。燃料の転換や除去装置の設置などで二酸化炭素といった温室効果ガスの排出はかつてより少ないだろう。それでも煤煙や排ガスを空気中に放出する様子に変わりはない。2050年のカーボンニュートラルに向けて乗り越えるべきハードルは高いが、それをクリアする技術進歩に期待したい。

 

 一般家庭同様、工場地帯からも将来は煙突が姿を消すのだろうか。入口を失ったサンタクロースには受難の時代だが、北欧の国からトナカイのソリでやってくる彼らにとっても、澄み切った星空を進むことができれば気分は良いだろう。

  

 

 

(二川)

 

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