第224回 (2023年12月6日)
欧州のエネルギー企業が急速に化石燃料へ回帰している。英シェルと仏トタルエナジーズは10月、2050年代まで及ぶLNGの長期契約を相次いでカタールと結んだ。二酸化炭素回収・貯留(CCS)技術やカーボンクレジットでCO2排出を相殺するとはいえ、英仏ともに日本と同様、2050年までのカーボンニュートラル実現を標榜していただけに、脱炭素に対する積極性を失いつつある印象だ。
欧州の脱炭素政策にもともと懐疑的だった市場関係者は、「再エネは結局儲からないから」とバッサリ。太陽光の発電コストは今後、パネル価格の低下とともに下がっていく見込みだが、欧州ではロシアによる天然ガスの供給操作という、コスト以上に大きな問題を孕んでいる。ロシアは欧州向け天然ガスの供給量を、ウクライナ侵攻前と比べて、10~15%にまで減らした。「背に腹は代えられぬ」状況で、化石燃料であるLNGを選択するというのが、欧州にとってはさしあたっての現実的な解決策なのだろう。
とはいえ、今年の夏は暑かった。この暑さが続けば、生物の住める地域がどんどん狭くなっていくという危機感を抱いている人は、少なくないはずだ。脱炭素に向けて2兆円超を投じる日本は、地球環境の保全を目指して、今後も最大限の努力を続けていくだろう。前述の市場関係者は「日本は脱炭素をやめられず、尊敬だけ集めて貧しくなる」と懸念するが、果たして30年後、どんな成果が得られているか。願わくば、両得であらんことを。
(志賀)